成年被後見人または被保佐人がいる遺産分割協議
共同相続人に成年被後見人または被保佐人がいる場合の遺産分割協議について説明しています。成年被後見人の遺産分割協議は成年後見人が行います。被保佐人は保佐人の同意を得て遺産分割協議を行います。遺産分割協議が利益相反行為に該当する場合は、特別代理人等の選任が必要になります。

成年被後見人又は被保佐人がいる遺産分割協議

このページでは、共同相続人の中に、制限行為能力者である被後見人または被保佐人がいるときの遺産分割協議について説明します。

 

 

共同相続人の中に成年被後見人がいる場合の遺産分割協議

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法7条)で、家庭裁判所の後見開始の審判により成年後見人が付されている者のことをいいます。(民法8条)

 

成年被後見人は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、契約等の財産法上の行為を行うことができず、成年後見人が成年被後見人の財産を管理し、成年被後見人にかわって契約等の財産法上の行為を行うことになります。(民法9条、859条)

 

遺産分割協議は、財産法上の行為に該当することから、成年被後見人は、自ら遺産分割協議を行うことができず、成年後見人が成年被後見人を代理して遺産分割協議を行うことになります。
(なお、成年被後見人が自ら遺産分割協議を行った場合、成年後見人は、当該遺産分割協議を取り消すことができます。(民法9条))

 

なお、後見監督人が選任されている場合、成年後見人が成年被後見人を代理して遺産分割協議を行うには、後見監督人の同意が必要になります。(民法864条)

 

遺産分割協議は、共同相続人の全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で相続財産を分配することができるとされていますが、共同相続人の中に成年被後見人がいる場合、成年後見人は成年被後見人の法定相続分(具体的相続分)を最低限確保する内容の分割でなければ合意することができないとされている点には注意をする必要があります。

 

成年後見人も共同相続人の場合(利益相反行為)

同一の相続に関して、成年後見人も共同相続人の1人である場合、成年後見人が相続人兼成年被後見人の法定代理人として遺産分割協議を行うことは、成年後見人と成年被後見人の利害が衝突する虞がある利益相反行為に該当するため、成年後見人の法定代理権は制限され、成年被後見人の代理人として遺産分割協議を行うことができません。(民法860条(826条を準用))

 

特別代理人の選任
遺産分割協議が利益相反行為になる場合には、成年後見人は、成年被後見人のために、家庭裁判所に特別代理人の選任の申し立てを行います。(民法860条、826条2項)

 

遺産分割協議は、家庭裁判所により選任された特別代理人が成年被後見人を代理して遺産分割協議を行うことになります。

 

後見監督人が選任されている場合
遺産分割協議が利益相反行為に該当する場合であっても、後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が、成年被後見人に代わって遺産分割協議を行うことになります(民法851条4号)ので、特別代理人を選任する必要はありません。(民法860条但書)

 

共同相続人の中に被保佐人がいる場合の遺産分割協議

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)で、家庭裁判所の保佐開始の審判により保佐人が付されている者のことをいいます。(民法12条)

 

被保佐人が民法が定める重要な行為を行う場合、保佐人の同意を得ることを要するとされています。(民法13条)
この重要な行為の一つとして、遺産分割協議が定められています。(民法13条6号)

 

よって、共同相続人の中に被保佐人がいる場合、被保佐人が遺産分割協議を行うには、保佐人の同意を得ることが必要になります。

 

基本的には、事前に保佐人の同意を得る必要がありますが、事後的な同意でも差し支えないとされています。

 

被保佐人が代理人として遺産分割協議を行う場合
保佐開始の審判がなされても、当然には保佐人に包括的な代理権は認められませんが、家庭裁判所により保佐人に代理権を付与する審判がなされ、代理権の範囲に遺産分割協議が含まれている場合であれば、保佐人は被保佐人を代理して遺産分割協議を行うことができます。(民法876条の4)

 

被保佐人も共同相続人の場合(利益相反行為)

同一の相続に関して、保佐人も共同相続人の1人である場合、保佐人が被保佐人が行う遺産分割協議に同意を与えることや、保佐人がが相続人兼被保佐人の法定代理人として遺産分割協議を行うことは、保佐人と被保佐人の利害が衝突する虞がある利益相反行為に該当するため、保佐人の同意権又は法定代理権は制限され、被保佐人の遺産分割協議について同意すること又は、被保佐人の代理人として遺産分割協議を行うことはできません。(民法860条(826条を準用))

 

臨時保佐人の選任
遺産分割協議が利益相反行為になる場合には、保佐人は、被保佐人のために、家庭裁判所に臨時保佐人の選任の申し立てを行います。(民法876条の2第3項)

 

遺産分割協議は、家庭裁判所により選任された臨時保佐人が、被保佐人の遺産分割協議について同意し、または被保佐人を代理して遺産分割協議を行うことになります。

 

保佐監督人が選任されている場合
遺産分割協議が利益相反行為に該当する場合であっても、保佐監督人が選任されている場合は、被保佐人の遺産分割協議について同意し、又は保佐監督人が被保佐人を代理して遺産分割協議を行うことになります(民法876条の3第2項(民法851条4号を準用))ので、臨時保佐人を選任する必要はありません。(民法876条の2第3項但書)

 

 

 

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