相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議

相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議

共同相続人の中に、未成年者がいる場合、法定代理人である親権者が、未成年の子に代わって、遺産分割協議に参加するのを原則とします。

 

ただし、親権者も共同相続人である場合は、遺産分割協議は、利益相反行為に該当するため、特別代理人の選任が必要になります。

 

ここでは、共同相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議について説明します。

 

親権者は未成年の子の法定代理人です。
未成年の子は、父母の親権に服し(民法818条)、親権を行う父母は、親権に服する子の財産権上の法律行為を代表する(民法824条)、と規定されています。

 

親権は、父母が婚姻中のときは、共同して行使しするのを原則とします。

 

遺産分割協議は、財産権上の法律行為と解されていますので、未成年者は単独で遺産分割協議を行うことはできず、親権者が未成年の子を代理して遺産分割協議を行うことになります。

 

特別代理人の選任
ただし、親権に服する未成年の子と親権者が共に共同相続人であるときは、遺産分割協議は、未成年の子と親権者との間で利害関係が衝突する利益相反行為に該当しますので、親権者は、当該遺産分割協議について、未成年の子を代理することができません。

 

この場合、親権者は、未成年の子のために、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てなければなりません。(民法826条1項)

 

これは、親権者が自己の利益を図って、未成年の子の利益を損なうおそれがある行為(利益相反行為)については、親権者の代理を認めず、裁判所が選任した者(特別代理人)に代理させることにより、未成年の子の利益を保護するための制度です。

 

遺産分割協議は、家庭裁判所に選任された特別代理人が未成年の子を代理して行います。

 

親権者とその数人の親権に服する未成年の子が共同相続人として遺産分割協議を行う場合には、各子毎に別人の特別代理人を選任しなければなりません。(民法826条2項)

 

申立人は、特別代理人選任申立てにあたり、親族等を特別代理人の候補者として挙げることができますが、未成年者との利害関係の有無などを考慮して、その適格性を判断し、最終的には、家庭裁判所が特別代理人を決定します。

 

親権者とその親権に服する子が遺産分割協議を行うにあたり、この遺産分割協議に参加する他の共同相続人を特別代理人の選任することはできないとされています。

 

未成年者である子2人が共同相続人の場合、その親権者(共同相続人ではない)は、未成年者である子の一方を代理することはできるが、両方の子を代理することは利益相反行為に当たるので、他方の子のために特別代理人を選任する必要があります。

 

相続財産のすべてを取得させる内容の遺産分割協議は、利益相行為に該当するのか?
相続財産をすべて未成年の子が取得するといった内容であれば、未成年の子の利益を害することはないので、親権者が未成年の子の代理人として、遺産分割協議を行うことができるのではないかと考えられるかもしれません。

 

これに関して、利益相反行為に該当するかどうかは、行為の客観的性質により決定すべきであり、親権者の意図や協議の結果は考慮すべきでないとする考え方(形式的判断説)が、裁判所の一貫した見解です。

 

ですから、未成年の子に相続財産の全部を取得させる内容の遺産分割協議を行う場合であっても、親権者は、未成年の子のために特別代理人の選任を申立てなければならないことになります。

 

登記先例も形式的判断説によっています。

親権者である母と未成年の子がともに相続人である場合において、遺産分割協議の結果、母は相続財産の分配を受けないものとするときでも、特別代理人の選任を要する。(登記研究459号97頁【質疑応答】6704)

 

未成年者とその親権者とが相続人である場合において、遺産分割協議をするには、分割の結果が法定相続分となる場合であっても、未成年者のために特別代理人の選任を要する(登記研究476号140頁【質疑応答】6886)

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