相続の開始原因(死亡・失踪宣告・認定死亡)
相続は、人の死亡により開始します。(民法882条)
戦前の家督相続では、戸主の死亡の他、隠居、国籍喪失等により家督相続が開始することがありましたが、現行の相続開始原因は人の死亡のみです。
死亡には、自然死亡の他、失踪宣告による死亡、認定死亡も含まれます。
自然死亡
通説では、心停止をもって死亡とします。
自然死亡の場合の死亡時期は、戸籍に記録された年月日時分をもって確定します。
死亡に関する戸籍の記録は、死亡届に添付される死亡診断書又は死体検案書によりなされます。(戸籍法86条)
〜死亡診断書と死体検案書〜
医師は、自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認めるときは「死亡診断書」を、それ以外の場合には「死体検案書」を作成し交付する義務があります。(医師法19条2項)
失踪宣告制度
一定期間生死が不明の人に対して、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪には、普通失踪と特別失踪があります。
普通失踪による失踪宣告(民法30条1項)
不在者の生死が7年間明らかでないときに、利害関係人の請求により家庭裁判所が行う失踪宣告です。
失踪宣告の審判がなされると、失踪宣告を受けた不在者は、7年間の期間が満了したときに死亡したものとみなされます。(民法31条)
特別失踪による失踪宣告(民法30条2項)
戦地に臨んだ人、沈没船に乗船していた人、その他死亡の原因になる危難に遭遇した人の生死が、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又は危難が去った後1年間明らかでないときに、利害関係人の背一級により家庭裁判所が行う失踪宣告です。
失踪宣告の審判がなされると、失踪宣告を受けた者は、その危難が去ったときに死亡したものとみなされます。(民法31条)
失踪宣告を受けた者の生存が判明した場合でも、失踪宣告によりみなされた死亡の効果は当然に失われず、本人又は利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪宣告の審判を取り消すことにより、そのときに遡って死亡の効果が消滅することになります。(民法32条)
認定死亡
水難、火災、その他の事変により、死亡したことはほぼ間違いないが、死体が発見されないため死亡診断書又は死体検案書を作成することができない場合、その調査にあたった官公署が行った死亡報告に基づき戸籍簿に死亡の記載をすることが認められています。(戸籍法89条)
これを一般的に「認定死亡」と呼んでいます。
ただし、認定死亡がなされた場合でも、失踪宣告と異なり、法律上死亡したものとみなされるわけではないので、後日生存していることが判明したときは、認定死亡の効力は当然失われます。
戸籍の高齢者消除
100歳以上の所在不明者で、死亡の蓋然性が高い人について管轄法務局の長の許可により、職権で除籍することがあります。これを「高齢者消除」と呼んでいます。
高齢者消除は、戸籍整理のための行政上の措置であり、戸籍には、死亡の日時場所は記載されないことから、高齢者消除をもって相続開始原因である死亡とすることはできないとされています。
この場合、法律上死亡を確定させるには、失踪宣告による必要があります。
〜高齢者消除の記載ある戸籍では相続登記は受理できないとした先例〜
「年月日時及び場所不詳死亡、昭和22年10月25日付鳥取司法事務局長の許可により同月29日除籍」と戸籍簿に記載ある者を被相続人とする相続登記は受理できない。届出により、死亡の日又は失踪宣告により死亡とみなされた日が戸籍に記載された後に、当該相続登記を申請すべきである。(昭和32年12月27日民三第1384号第三課長事務代理電報回答)
戸籍事務上のいわゆる高齢者消除の措置は、死亡の時点までも確認したうえで行われているものではないから、これによって直ちに、相続開始の時を判定することはできず、相続登記をすることもできない。(昭和46年2月10日法曹会決議)
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