相続登記における印鑑証明書について
遺産分割協議書を添付して相続登記を申請する場合には、遺産分割協議者(相続人)は、遺産分割協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付しなければならない取扱いになっています。

相続登記における印鑑証明書について

遺産分割協議書を添付して相続登記を申請する場合には、遺産分割協議者(相続人)は、遺産分割協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付しなければならない取扱いになっています。(昭和30年4月23日民事甲第742号民事局長回答)

 

相続登記申請人の印鑑証明書添付の要否について

遺産分割協議者(相続人)は、遺産分割協議書に実印を押印して印鑑証明書を添付することを要しますが、現在の登記実務では、「相続登記の申請人については、印鑑証明書の添付を省略することができる」取扱いになっています。

 

例えば、相続人A、B、Cの3名で、相続人Aがすべての不動産を相続する旨の遺産分割協議が成立した場合であれば、遺産分割協議書には、相続登記の申請人となるA以外のBおよびCのみが実印を押印し、その印鑑証明書を添付すれば相続登記の申請は受理される取扱いです。(申請人となるAは、印鑑証明書の添付を省略することができることから遺産分割協議書に実印を押印する必要がないことになります。)

 

但し、次のような遺産分割協議が成立した場合は、相続人全員が遺産分割協議書に実印を押印する必要があります。

 

相続人A、B、Cの3名で、相続人Aは甲不動産を、相続人Bは乙不動産を相続する旨の遺産分割協議が成立した場合。

 

甲不動産については、相続人Aは申請人となるが、乙不動産については、申請人以外の相続人となるので、相続人Aは、この遺産分割協議書に実印を押印する必要があります。(自らが申請人となる甲不動産に係る相続登記の申請には、Aの印鑑証明書は不要ですが、自らが申請人とならない乙不動産については(Bが申請人)Aの印鑑証明書を添付する必要があります。)
相続人Bについても同様です。

 

 

印鑑証明書の有効期限について

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書については、有効期限の定めはありませんので、作成後3ヶ月を経過したものであっても差し支えありません。

 

遺産分割協議書作成日以前に作成された印鑑証明書であっても差し支えありません。

 

 

遺産分割協議書作成後に遺産分割協議者である相続人が死亡した場合

遺産分割協議書に署名・押印後に、遺産分割協議者である相続人が死亡した場合、死亡した相続人が生前取得した印鑑証明書がある場合、その印鑑証明書を添付することができます。

 

死亡した相続人が生前に印鑑証明書を取得していなかった場合は、死亡した相続人の相続人全員が『遺産分割協議書が真正に作成された旨の証明書』(相続人全員が実印を押印し印鑑証明書を添付、この印鑑証明書も有効期限の定めはありません。)を作成し、相続登記の添付書類の一部として提出します。

 

例えば、被相続人X、相続人は、配偶者A、子B、子Cの3名で、遺産分割協議書作成後にAが死亡した場合、Aの相続人であるBおよびCが『遺産分割協議が真正に作成された旨の証明書』を作成し、その証明書に実印を押印し、印鑑証明書を添付します。

 

印鑑証明書を提出することができない在外日本人の場合

日本国内に居住していないと印鑑登録をすることができませんので、在外日本人は、遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑証明書を添付することができません。

 

実印を押印し、印鑑証明書の添付を求めるのは遺産分割協議書の真正を担保するためですのでこの目的を達することができる同等の措置を講ずればよいことになります。
実印を押印し、印鑑証明書を添付することに代替するものとして以下の方法が認められています。

 

在外公館で署名証明を受ける方法

署名証明書
日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続のために発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。

 

証明の方法は2種類です。形式1は在外公館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割り印を行うもの、形式2は申請者の署名を単独で証明するものです。(外務省ホームページより)

 

この署名証明書が、印鑑証明書に代わる書類となります。

 

相続登記の添付書面として提出する場合は、形式1の署名証明書が無難です。
(以前、ある法務局に形式2の署名証明書を添付して相続登記を申請することができるかどうか確認したところ、不可との回答を得たことがあります。)

 

在外公館で印鑑登録をする方法

在外公館によっては印鑑登録が可能なところもあるようです。
この場合、登録した印鑑に係る印鑑証明書の発給を受け、この印鑑証明書を提出することができます。

 

宣誓供述書を作成し、現地公証人の認証を受ける方法

在外日本人の場合、在外公館(日本国(総)領事)の証明にかかる証明書を提出するのが相当であるが、便宜、外国公証人の証明に係る証明書を提出することもできます。

 

居住地から在外公館までの距離があり、在外公館に出向くのが困難な場合等は、最寄りの外国公証役場で、宣誓供述書の認証を受けることができます。

 

【参考先例】
所有権の登記名義人である在米日本人が、登記義務者として登記を申請するにつき、申請書に添付されている委任状の署名が本人のものに相違ない旨のアメリカ合衆国公証人の証明である場合には、印鑑証明書の添付を便宜省略してもさしつかえない。(昭和40年6月18日民事甲第1096号民事局長回答)

 

日本の公証人の認証を受ける方法

在外日本人が、日本国に一時帰国している場合、日本の公証役場において遺産分割協議書の認証を受けることができます。

 

【参考先例】
日本国公証人は、メキシコ在住の日本人が日本国内にある間にした委任行為を公証する権限を有する。
(昭和58年5月18日民三第3039号民事局第三課長依命回答)

 

この通達では、メキシコ在住の日本人が行った委任行為について日本国の公証人が公証することが可能かどうかについて回答したものですが、メキシコ国に限定されるものでなく、メキシコ国以外の海外在住の日本人についても適用され、また、委任だけでなくあらゆる法律行為(遺産分割協議も法律行為)に適用されるものと解されます。

 

 

 

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