【権利部乙区】
順位番号 | 登 記 の 目 的 | 受付年月日・受付番号 | 権 利 者 そ の 他 の 事 項 |
1 | 所有権移転 |
平成10年○月○日 |
原因 平成10年○月○日売買 |
2 | 所有権移転仮登記 |
平成25年○月○日 |
原因 平成25年○月○日売買 |
余白 | 余白 | 余白 |
上記、不動産登記記録によると、平成25年に乙野太郎が甲野太郎からこの不動産を売買により取得したが、本登記ではなく甲区2番で仮登記がなされています。
仮登記名義人である乙野太郎が死亡し、甲区2番で仮登記がなされている所有権を乙野太郎の相続人である乙野次郎が相続により取得した場合、乙野次郎は、登記名義を自己名義に変更するには、どうような登記手続きを行えばよいのでしょうか?
甲区2番でなされた仮登記は、いわゆる1号仮登記ですので、この不動産の所有権は、実体上、甲区1番の所有者である甲野太郎から乙野太郎に移転しています。(実体上の所有権者は乙野太郎)
1号仮登記とは、実体上、権利変動は生じているけれども、登記申請に必要な手続き上の要件(法定の添付書面が揃っていない等)が備わっていない場合にすることができる仮の登記です。
以下では、仮登記所有権を相続した場合、相続人はどのような登記手続きが必要になるのかについて解説致します。
@2番仮登記の本登記を経る場合
甲区2番の仮登記の本登記を申請した後、相続を原因とする所有権移転登記(相続登記)を申請します。
一件目の申請 甲区2番仮登記の本登記
二件目の申請 相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)
仮登記の本登記は、甲区2番の仮登記名義人である乙野太郎を登記権利者、甲区1番の登記名義人である甲野太郎を登記義務者として、共同して申請する必要があります。
なお、登記権利者である乙野太郎は死亡しているので、乙野太郎の相続人が登記権利者になります。
登記義務者である甲野太郎も死亡している場合、甲野太郎の相続人全員が登記義務者になります。
登記完了後の登記記録例です。
【権利部乙区】
順位番号 | 登 記 の 目 的 | 受付年月日・受付番号 | 権 利 者 そ の 他 の 事 項 |
1 | 所有権移転 |
平成10年○月○日 |
原因 平成10年○月○日売買 |
2 | 所有権移転仮登記 |
平成25年○月○日 |
原因 平成25年○月○日売買 |
所有権移転 |
令和2年○月○日 |
原因 平成25年○月○日売買 |
|
3 | 所有権移転 |
令和2年○月○日 |
原因 令和2年○月○日相続 |
A2番仮登記の本登記を経ない場合
一般的には@の方法(仮登記の本登記後に相続登記を申請)によりますが、諸事情により仮登記の本登記を直ぐにはできないこともあります。
この場合、仮登記の本登記を経由せずに相続登記を申請することも可能です。
ただし、甲区2番の仮登記の本登記を経ずに、乙野次郎が相続登記を申請する場合、その相続登記は、仮登記で申請しなければなりません。
乙野次郎が相続により取得した所有権は、仮登記のなされた所有権であるので、乙野次郎の相続登記も仮登記になります。(登記の目的は、2番仮登記所有権移転登記の仮登記)
つまり、仮登記は対抗力を有しないことから、仮登記所有権を取得した者に本登記に登記を認めると本来有しない対抗力を付与する結果になってしまうことから、その登記はあくまで仮登記でなされるということです。
この仮登記は主登記でなされます。(独立した順位番号が付されます。)
実体上は、甲野太郎⇒乙野太郎⇒乙野次郎と所有権が移転していますので、その過程を正しく反映させるため、甲野次郎の相続登記は、主登記(の仮登記)でなされることになります。
根拠先例
不動産登記法第2条第1号(現第105条第1号)の仮登記された所有権の移転登記は、主登記による仮登記もってなすべきである。(昭和36年12月27日付民事甲第1600号民事局長通達)
不動産登記法第2条第1号(現第105条第1号)の所有権移転仮登記の相続による移転は、主登記による仮登記によるのが相当である。(登記研究480号180頁【質疑応答】)
登記完了後の登記記録例
【権利部乙区】
順位番号 | 登 記 の 目 的 | 受付年月日・受付番号 | 権 利 者 そ の 他 の 事 項 |
1 | 所有権移転 |
平成10年○月○日 |
原因 平成10年○月○日売買 |
2 | 所有権移転仮登記 |
平成25年○月○日 |
原因 平成25年○月○日売買 |
余白 | 余白 | 余白 | |
3 | 2番仮登記所有権移転の仮登記 |
令和2年○月○日 |
原因 令和2年○月○日相続 |
余白 | 余白 | 余白 |
乙野次郎が本登記を取得するには、2番仮登記の本登記を経た後、3番仮登記の本登記を申請する必要があります。(2番仮登記の本登記を経ずに、3番仮登記の本登記を申請することはできない。)
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