競売申立の前提として行う代位による相続登記の代位原因証明情報
不動産の競売申立(強制競売及び担保権実行としての競売)を行うに当って、不動産登記記録上の所有者が死亡している場合、債権者は死亡者を相手として競売を申立てることができず、その前提として不動産の登記名義を債務者の相続人名義に変更されない限り不動産競売の手続きを行うことができません。この場合、債権者は、相続人に代位して相続登記を申請することができます。

競売申立の前提として行う代位により相続登記の代位原因証明情報

不動産の競売申立(強制競売及び担保権実行としての競売)を行うに当って、不動産登記記録上の所有者が死亡している場合、債権者は死亡者を相手として競売を申立てることができず、その前提として不動産の登記名義を債務者の相続人名義に変更されない限り不動産競売の手続きを行うことができません。

 

死亡者名義の不動産を目的として競売を申立てるには、登記名義を死亡者からその相続人に変更する手続き、いわゆる相続登記を行っておく必要があります。

 

相続登記は、相続人の単独申請により行うの原則としますが、債権者は債権者代位権(民法423条)の行使として、相続人に代位して相続登記を申請することができます。

 

不動産手続きにおいて、代位登記を申請する場合には、代位原因を証する情報を提供しなければならない(不動産登記令第7条第3号)ことになっているのですが、具体的な書面について明文上明らかにはなっておらず、先例等で示された書面を代位原因証明情報(代位原因証書)として提出するのが実務となっています。

 

以下、先例等で示された具体的な代位原因証明情報を確認します。

 

担保権実行による競売申立ての前提として行う代位による相続登記の代位原因証明情報

担保権実行による競売申立ての前提として、相続登記を代位申請する場合、『競売申立受理証明書』が代位原因証明情報になります。

根拠通達【要旨】
抵当権設定登記がある不動産の所有権登記名義人について相続が開始した後、当該抵当権の登記名義人が代位原因証書として当該抵当権の実行としての競売の申立を受理した旨の証明書を添付の上、相続人に代位してする相続登記の申請は受理して差し支えない。
(昭和62年3月10日法務省民三第1024号民事局長回答)

 

 

強制競売申立ての前提として行う代位による相続登記の代位原因証明情報

強制競売申立ての前提として、相続登記を代位申請する場合、「相続人に対する承継執行文の付与された債務名義」が代位原因証明情報になります。

根拠先例(要旨)
強制競売の対象となる不動産の所有権登記名義人が既に死亡している場合において、当該所有権登記名義人の債権者が代位原因を証する情報として相続人に対する承継執行文の付与された債務名義を添付の上、当該相続人に代位してする相続登記の申請は受理して差し支えない。
(登記研究769号カウンター相談232)

 

本件照会は、担保権実行としての競売申立に係るものであるが、強制執行においては、被相続人に対する債務名義を有する債権者は、相続人に対する承継執行文の付与を受けてはじめて執行できることとされているので、この場合には承継執行文の付与された債務名義が代位原因を証する書面となるものと考える。
(昭和62年3月10日法務省民三第1024号民事局長回答の解説文五(登記研究473号116頁))

 

強制競売の場合でも、「競売申立受理証明書」が代位原因証明情報となる旨の見解もあります。

根拠通達
なお、この場合(強制競売申立ての前提として相続登記を代位申請する場合のこと)、代位原因を証する書面として、強制競売の申立てを受理した旨の裁判所の証明書を添付するのが相当である。
(平成元年9月12日付法務省民三第3591号第三課長回答)

 

ただし、前掲先例(カウンター相談232)の解説によると強制競売の申立ての場合、競売申立受理証明書を発行しない裁判所もあるとのことです。

 

大阪地方裁判所ホームページの「競売申立時の代位登記について」のページには、強制競売を申立ての前提として行う相続登記の代位申請の添付書面として『強制競売を申し立てるための債務名義(判決等)の正本』を、担保権実行による競売の申立ての前提として行う相続登記の代位申請の添付書面として『競売申立受理証明書』を記載しています。

 

東京地方裁判所ホームページの「競売申立時の代位登記について」のページでは、強制競売と担保権実行としての競売を分けずに、競売申立の前提として行う相続登記の代位申請の添付書面として『競売申立受理証明書』が記載されています。

 

 

競売申立の前提として行う代位による相続登記の申請書記載

 

 

登記申請書

 

登記の目的 所有権移転
原   因 令和○年○月○日相続
相 続 人 (被相続人 甲野太郎)
○○市○○町一丁目2番地
(被代位者)持分2分の1 甲野花子
○○市○○町一丁目2番地
(被代位者)  2分の1 甲野一郎
代 位 者 ○○市△△町一丁目3番地
             乙野次郎
代位原因 平成○年○月○日金銭消費貸借による強制執行
添付情報
登記原因証明情報 代位原因証明情報  住所証明情報

 

令和○年○月○日申請 ○○法務局

 

課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円

 

不動産の表示(省略)

 

代位による申請の場合、代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因が登記事項となりますので、申請書にこれらを記載しなければなりません。

 

代位原因の記載例について
・強制競売の場合
「年月日金銭消費貸借による強制執行」の振り合いによります。
(不動産登記記載例集第十六 代位の登記二(619)参照)

 

・担保権実行としての競売の場合
「年月日設定の抵当権の実行による競売」の振り合いによります。
(昭和62年3月10日法務省民三第1024号民事局長回答【要旨】二参照)

 

登記識別情報の通知について
代位により相続登記を申請した場合、相続人には登記識別情報は通知されません。
登記識別情報は、申請人自らが登記名義人になる場合に通知されますので、代位による申請の場合、(代位)申請人は当該登記の登記名義人とはなりませんので登記識別情報通知されないことになります。
(不動産登記法第21条参照)

 

 

 

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