抵当権抹消登記を申請するには相続登記は必要か?

この記事では、住宅ローンを完済したので抵当権抹消登記を申請したいが、設定者(抵当権が設定されている不動産(マイホーム)の所有者)が死亡している場合の抵当権抹消登記の申請方法について司法書士が解説します。

 

住宅ローン完済時が設定者の死亡の前か後かにより相続登記の申請の要否が異なります。

 

設定者(所有者)の死亡前に住宅ローンを完済した場合

事例
・甲は、マイホームを購入するにあたりX銀行の住宅ローンを利用
・購入したマイホームにはX銀行の抵当権設定登記がなされている。
・甲は、生前中に住宅ローンを完済
・甲は、抵当権抹消登記の申請をすることなく死亡
・甲の相続人は妻Aと子B
相続人はマイホームに設定されているX銀行の抵当権設定登記を抹消したいと考えている

甲の相続登記を行わずに抵当権抹消登記を申請することができる。

 

上記事例の場合、甲が住宅ローンを完済した時点で、X銀行の抵当権は消滅することになります。
抵当権は、被担保債権(住宅ローン債務)に従たる権利で、被担保債権が弁済等により消滅すると、抵当権も当然に消滅することになります。この性質を抵当権の附従性と呼んでいます。

 

住宅ローンの完済によりX銀行の抵当権が消滅することにより、甲は、抵当権抹消登記の申請をすることができるようになります。(甲は、抵当権抹消登記がなされることにより登記記録上利益を受ける者であることから登記権利者といい、逆に、X銀行は、抵当権抹消登記がなされることにより登記記録上不利益を受ける者であることから登記義務者といいます。)

 

甲は、抵当権抹消登記を申請することなく死亡してしまった訳ですから、登記権利者の地位は、相続の一般原則に従い、甲の相続人が相続することになります。

 

不動産登記法第62条で、登記申請権を有する者が、その登記を申請しないうちに死亡した場合、その相続人が登記を申請することができると定めています。

不動産登記法第62条 
登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる。

 

本事例の場合、抵当権抹消登記の登記申請人(登記権利者)甲の相続人である妻A及び子Bは、甲に代わって抵当権抹消登記を申請することができます。

 

登記権利者の相続人が抵当権抹消登記を申請する場合の添付書面ですが、解除証書等の抵当権抹消登記に必要な一般的な書類の他、相続を証する書面が必要になります。
(子Bが抵当権抹消登記を申請する場合、甲の死亡の記載がある戸籍謄本等及びBの戸籍謄本等が必要になります。)

 

抵当権抹消登記の前提として相続登記を行う必要はあるのか?

相続開始前に、住宅ローンの完済により抵当権を消滅しているので、抵当権抹消登記を申請する前提として、妻A又は子B若しくは妻A及び子Bの共有名義の相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)の申請は必ずしも必要ありません。

 

もちろん、相続登記を申請してから抵当権抹消登記を申請することも可能です。
むしろこちらの方が実務では一般的です。
相続登記を経由した場合、抵当権抹消登記は、相続登記に係る登記名義人(相続により当該不動産を取得した者)が申請することになります。

 

相続人の一人から抵当権抹消登記を申請すること可否

本事例のように、登記権利者の相続人が複数いる場合、登記権利者として登記を申請することは保存行為(民法第252条但し書参照)と解されていますので、相続人全員が申請人になる必要はなく、相続人のうちの一人が抵当権抹消登記を申請することができます。(本事例では、妻A又は子Bのどちらか一方から申請することができます。

 

登記権利者の相続人が抵当権抹消登記を申請する場合の添付書面ですが、解除証書等の抵当権抹消登記に必要な一般的な書類の他、相続を証する書面が必要になります。
(子Bが抵当権抹消登記を申請する場合、甲の死亡の記載がある戸籍謄本等及びBの戸籍謄本等が必要になります。)

 

 

 

設定者(所有者)の死亡後に住宅ローンを完済した場合

事例
・甲は、マイホームを購入するにあたりX銀行の住宅ローンを利用
・購入したマイホームにはX銀行の抵当権設定登記がなされている。(設定者兼債務者甲)
・甲は、住宅ローンを完済する前に死亡
・甲の相続人は妻Aと子B
・甲の死亡後、妻Aが住宅ローンを完済
妻Aはマイホームに設定されているX銀行の抵当権設定登記を抹消したいと考えている。

甲の相続登記を経由した後、抵当権抹消登記を申請しなければならない。

 

本事例では、X銀行の抵当権は、甲の相続が開始した後に消滅しています。

 

設定者(所有者)の死亡後に住宅ローンを完済した場合の事例とは異なり、甲が住宅ローンを完済したことにより抵当権抹消登記を申請することができるようになったが、申請する前に死亡したためその相続人が抵当権抹消登記を申請する訳ではなく、不動産登記法第62条は適用されないケースです。

 

本ケースでは、時系列に従い、相続登記を経由した後に、相続登記に係る所有権登記名義人を登記権利者として抵当権抹消登記を申請しなければなりません。

 

団体信用生命保険に加入していた場合

団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済中に、加入者(債務者)に万が一のことがあった場合に、保険から残りの住宅ローンが返済される保険です。

 

加入者が死亡したため、団体信用生命保険から保険金が支払われると、住宅ローンが完済されることになりますので、それに伴い銀行がマイホームに設定した抵当権も消滅することになります。

 

この場合、時系列的には、保険加入者(債務者兼設定者)の死亡⇒保険金の支払い⇒住宅ローン完済⇒抵当権消滅となり、設定者死亡後に抵当権が消滅するケースに当りますので、抵当権抹消登記を申請する前に相続登記を行う必要があります。

 

 

マイホームが甲と妻Aが共有の場合

共有のマイホームに設定された抵当権の抹消登記の申請ですが、共有者の一人から申請することができます。

参考
共有不動産(A・B共有)に抵当権を設定したのち(抵当権者Cとする)債権につき全額の弁済があった場合には民法252条但し書きの規定により、AとCまたはBとCの共同申請によりA・Bを登記権利者として抹消登記を申請して差し支えない。
(登記研究463号85頁【質疑応答】6752)

 

では、共有者の甲が死亡した場合、Aの相続登記の申請を経由することなく、共有者Bは抵当権抹消登記を申請することができるのでしょうか?

 

共有者甲が死亡する前に住宅ローンを完済した場合

この場合、甲の相続登記を経ることなく、共有者Aは、保存行為として単独で抵当権抹消登記を申請することができます。
また、甲の相続人は、不動産登記法第62条の規定により、甲に代わって抵当権抹消登記を申請することができます。

 

共有者甲が死亡した後に住宅ローンを完済した場合
この場合、法務局により見解が分かれているみたいです。

 

『事項別不動産登記のQ&A210選8訂版274頁Q123』によると、A・B共有名義の不動産に抵当権設定登記がなされ、Aの死亡後もBが住宅ローンの返済を行い完済した場合、Aの相続登記を経ることなく、Bは抵当権者(銀行)と共同して抵当権抹消登記を申請することができるとされています。

 

理由としては、所有権登記名義人が死亡した後に抵当権が消滅した場合、抵当権抹消登記を申請する前提として相続登記を経由する必要があるが、共有不動産の場合、住宅ローンを完済すれば他の共有者であるAの死亡しているどうか関係なく共有者Bは登記権利者として登記申請権を有していること、且つ先述の通り抵当権抹消登記は共有者の一人から申請することが可能であることから、Aの死亡後に抵当権が消滅したとしても、Aの相続登記を経ることなくBと抵当権者が共同して抵当権抹消登記を申請することができるものと考えます。

 

管轄法務局により取扱いが異なることが考えられますので、本事例のような抵当権抹消登記を申請する場合は、事前に管轄法務局に確認してから申請した方がよいでしょう。

 

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