数次相続により最終的に相続人が1人となった場合の相続登記
数次相続により最終的に相続人が1人となった場合の相続登記はどのように行えばよいのでしょうか。Aの死亡により相続が開始(相続人は配偶者Bと子C)した後、その相続人である配偶者Bの死亡により、さらに相続が開始したことにより、子CがAの唯一の相続人となった場合、被相続人A名義の不動産の相続登記の申請はどのように行えばよいのかケース別に解説します。

数次相続により最終的に相続人が1人となった場合の相続登記

Aの死亡により相続が開始(相続人は配偶者Bと子C)した後、その相続人である配偶者Bの死亡により、さらに相続が開始したことにより、子CがAの唯一の相続人となった場合、被相続人A名義の不動産の相続登記の申請はどのように行えばよいのかケース別に解説します。

 

(1)Bの死亡前に、BCで遺産分割協議が成立していた場合
@BがA名義の不動産を取得する遺産分割協議が成立していた場合
この場合、BCによる遺産分割協議によりBが取得したA名義の不動産を、Bの死亡により開始した相続の唯一の相続人であるCが取得することになります。

 

相続登記の申請は、AからBへの相続登記を申請した後、BからCへの相続登記を申請する他、AからBへの相続登記の申請を省略してAからCへ直接相続登記を申請することもできます。(いわゆる中間省略による相続登記)
【関連記事】中間省略による相続登記

 

なお、AからBへの相続登記の申請は、死者を登記名義人とする相続登記の申請ですので、租税特別措置法84条の2の3第1項が適用され、登録免許税が非課税となります。(但し、不動産は土地に限ります。)
【関連記事】相続登記に係る登録免許税の免税措置

 

相続登記の添付する遺産分割協議書について
@BC間の遺産分割協議書が作成されている場合
Bの死亡前に、BCによる遺産分割協議が成立し、当該遺産分割協議に係る遺産分割協議書が作成されいる場合、当該遺産分割協議書を相続登記の申請の際に提出します。

 

ABC間の遺産分割協議書が作成されていない場合
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要ですが、遺産分割協議書を作成していなくても、相続人全員による口頭の合意があれば、遺産分割協議は有効に成立します。

 

この場合、Cは、BC間において遺産分割協議が成立した旨及びその内容を証する遺産分割協議証明書を作成します。(平成28年3月2日民二第153号民事第二課長回答参照)

 

ACがA名義の不動産を取得する遺産分割協議が成立していた場合
この場合は、Cは遺産分割協議によりA名義の不動産を取得していますので、AからCへの相続登記を申請することができます。

 

相続登記の添付する遺産分割協議書について
@BC間の遺産分割協議書が作成されている場合
Bの死亡前に遺産分割協議が成立し、当該遺産分割協議に係る遺産分割協議書が作成されいる場合、当該遺産分割協議書を相続登記申請の際に提出します。

 

登記実務では、遺産分割協議書には、申請人以外の相続人全員が実印で押印し、当該印鑑に係る印鑑証明書を添付する必要がありますので、当該遺産分割協議書にはBの実印による押印と印鑑証明書が添付されている必要があります。

 

遺産分割協議書を添付して相続による所有権移転登記を申請があった場合に、その遺産分割協議者の印鑑証明書の提出を要する。
(昭和30年4月23日民事甲第742号民事局長回答)

 

遺産分割協議書を添付して相続による所有権移転登記を申請する場合、登記申請人以外の印鑑証明書を添付すれば足りる。
(登記研究141号46頁【質疑応答】2991)

 

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書については有効期限の定めはありませんので、作成後3ヶ月を経過している古い印鑑証明書であっても差し支えありません。

 

Bの印鑑証明書が添付できない場合
印鑑登録者が死亡した後は、当該者の印鑑証明書の交付を受けることができません。
Bの印鑑証明書を添付できない場合は、作成済の遺産分割協議書およびC作成の遺産分割協議が真正になされた旨の証明書(Cの印鑑証明書付き)または遺産分割協議証明書(Cの印鑑証明書付き)を提出します。

 

共同相続人の一人が、当該相続登記を申請する前に死亡している場合でも、遺産分割協議書に押印した印について死亡前に交付を受けた印鑑証明書があれば、それを添付すればよく、また印鑑証明書が存しない場合は、死亡者の当該遺産分割協議が真正である旨の死亡者の相続人の署名押印した証明書を添付させ、その印鑑証明書をも添付させるのが相当である。
(登記研究106号44頁【質疑応答】2002)

 

共同相続人のうち一人を不動産の単独所有者とする遺産分割協議書作成後、他の共同相続人が死亡しその印鑑証明書がない場合において、遺産分割による所有権の移転の登記を申請するには、死亡した共同相続人の相続人全員が作成した遺産分割協議が真正に為された旨の証明書(印鑑証明書付)を添付しなければならない。
(登記研究220号72頁【質疑応答】4310)

 

ABC間の遺産分割協議書が作成されていない場合
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要ですが、遺産分割協議書を作成していなくても、相続人全員による口頭での合意があれば、遺産分割協議は成立します。

 

この場合、Cは、BC間において遺産分割協議が成立した旨及びその内容を証する遺産分割協議証明書を作成します。

 

 

(2)Bの死亡前に、BCで遺産分割協議がなされていない場合
A名義の不動産をC名義とするには、持分各2分の1のBC名義の共同相続登記を申請した後、相続によるB持分全部移転登記を申請します。

 

数次相続が開始された場合、第一次相続の相続人の相続人は、第一次相続の相続人たる地位を承継し、第一次相続につき遺産分割協議に参加することができますが、数次相続により最終的な相続人が1人となった場合は、最終相続人は、もはや遺産分割協議を行うことができないとされています。

 

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これは、Bの相続開始により、CがAの唯一の相続人になっため、Aの相続に関し、BCによる遺産共有関係が解消されたので、遺産共有関係を解消を目的とする遺産分割の前提条件を欠き、遺産分割協議を行う余地がないことがその理由とされています。

 

なお、BC名義の共同相続登記のうち、Bについては、死者を登記名義人とする相続登記の申請ですので、租税特別措置法84条の2の3第1項が適用され、B持分に相当する部分の登録免許税が非課税となります。(但し、不動産は土地に限ります。)

 

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